点と点が線になる日。
- 惜しい、すぐだ、と言われながら昨季E3で1度も表彰台に上がれなかったこと
- 前半戦最大の目標としていた石川ロードを体調不良で欠場したこと。
- 前日のクリテリウムで天候に日和って中途半端な走りしかできなかった自分。
- それとは対照的に県内の練習仲間達が残した素晴らしいリザルトの数々。
- クリテの後がわりと暇だったから家電量販店で最新のマッサージ機に座りぼーっと反省したこと。
- 宿泊したとんでもない山奥にある宿の美味しい食事と鉱泉。
- 当日の早朝に無理して食べて、わりと気持ち悪くなったファミリーマートの混ぜソバ。2度と食べない。
- 身近な人にサポートして貰いながら、なかなか思うような結果を見せられなかったこと。
数々の点と点、正解と不正解、無数の要素が点として並んだ時、それらを結ぶ線となりある1つの結果に帰結する。7/30(日)はそういう日であった。
何が良くて何が良くなかったのかはわからない。ただそういう結果になったことだけは間違いなく正しく、一見無駄と思われる点も無駄ではなかったと1枚のリザルトが告げていた。
ついにやりました!念願であったJBCFのレースで初めて入賞できました!
一言で言うとクソうれしいです。2位だけど(小声)
正式名:第1回 JBCF やいた片岡ロードレース
リザルト:E2 2位/92人(2.1%) 1:01:29 TOP+00:00(S)
1.レースレポート
前日のクリテリウムで練習仲間の古谷君・キリが昇格していたため、見知った顔が増えたE2のレース。話は前日に戻る。
「明日は負けませんよ~。」と言うキリはボンシャンスに所属する伸び盛りの中学3年生だ。夕方の監督会議の会場に行ってみると、見事にクリテリウムで1発優勝、初の実業団レースで昇格を果たしたところだった。
「E3は危険だろ、落車とか無かったの?」と聞くと「ずっと先頭の方走ってたのでちょっと分からなかったです。」とさっぱりと言う。まったくお前は漫画かよ。
そこにきてアナウンサーが「E3一組目の優勝はフルヤカンセイ選手。」おいおい、1組目は古谷くんが優勝?これまたすげえな!
本人に聞くと最後の500mで掛けました~と、嬉しそうに、いつものぼんやりした表情で言う。素晴らしいじゃないか。
またGreenSctでよく一緒に朝練しているLINK TOHOKUの森田君も強豪ひしめくE1で5位入賞!RIDE Freaksの古谷さんもE1シングル、黒澤さんもE3入賞。
みんな本当にすごい。地元茨城の練習仲間達の素晴らしいリザルトの数々だ。
それと比べてクリテリウムの自分の走りはどうだ?
「この雨じゃ怖くてリスクは犯せないっすよ。今日は流して明日にかけようかな~。」なんて言っていた自分。
冷静ぶって目の前のレースの勝利に対する気持はどうしたんだ?
自分に腹が立った。それで心に火が着いた。
今日のコースは10.3キロの公道を大きく4周する。会場である片岡駅前を起終点に、住宅地や鮮やかな田園の中、通学路かと思うような細い道を抜けて2車線の太い県道に至る。
5kmかけて緩やかに登り、その後は5kmを下りきって右折から250mの緩い登りスプリントでゴールする。全体で見ると標高差は100mもないが、変化に富んでいてとても楽しいコースだ。
コースプロフィールを見る限りでは緩い登りしかないように見えたが、試走してみると登りの一部の勾配がキツイ。けどほぼ想像した通りのコースであった。下りの高速巡航とパンチスプリントが得意な、自分向きのコースである。
緩い下りの区間は道幅が広くて長いので集団有利、逃げができてもまず吸収されるはず。こうなると最後は集団スプリントになるのが目に見えている。個人戦のE2,E3では特にそうだろう。
気をつけるべきは、最終周の登りのペースアップによる分断と下りの高速の位置取り争い、最後のコーナー前の仕掛けどころだ。
それにしても、よくもこんなダイナミックなコース設定ができたな、と思う。主催者と栃木県の自転車競技にかける情熱には本当に頭が下がる。相当な人数の協力者と住民の理解がなければこんなコースでレースすることはできないだろう。
早めに並んで前から1/3程度でスタート。ローリングの区間が長く、油断していたらみんなの前にいく勢いに押されまくる。
解除までにかなり抜かれて後ろから1/3ほどになる。田園区間の道幅が狭いため、後ろにいると想像以上にインターバルがきつい。
対面区間の県道を抜けて最初の登りに入る。Stravaによると「コリーナの坂」と呼ばれる1分半700m程度の坂らしい。
短い分5倍~5.5倍の出力くらいか。登りきると短い下りと登りを2回繰り返すが、登りも下りの勢いを使って走れてしまう程度のものなので、最初の登りで集団から切れなければOKだ。
意識としては最後の勝負どころに向けて極力脚を温存すべく、坂は一定負荷で登り、下りや短い坂など位置を上げやすいところでは休みすぎず位置を上げることを意識する。
1周目の下りは集団の人数が多くて速度が出ているので相当怖い。無心になってラインを守って走る。エアロフォームを意識すればペダルを漕ぐ必要はなく、むしろブレーキが必要な程であった。
途中キリの近くに行ったので話すと、下りのケイデンスがやばいらしい。脚がくるくる回っててわろたw確かにジュニアギアでこのコースは少しかわいそうである。
と、ここで予期せぬトラブルが発生する。下り区間の中間あたりに大きな段差が1ヶ所あり、通過した時にチェーンがイン側に落ちた。
まさかこれで終戦?そもそも、だとしてもどうやってこの高速の大集団から離脱すればいいんだ…、と絶望する。
しかし下りの途中なのが幸いし、しばらく脚をがちゃがちゃ動かしていたらなんとか直った。あのままだったら一体どうなっていたことか、本当に焦った。
無事に下りを終えてスタート位置に戻りUターン区間に入る。このUターンまでの距離が短過ぎて、1周目の皆は一様にびっくりしていた。追突されなくて良かったが、あれはもう少し距離を取るべきに思える。
この周回は特に展開という展開はなく、1周目同様に集団中ほどで上げ下げを繰り返しながら消化し、3周目に入る。
3周目のコリーナの坂の途中から同一チームによる2人逃げが発生する。確か1人は前待ちして1人は坂で上げて一気に合流するような組織的な走りだったと思う。
下り区間でもそのまま集団と一定距離を維持する。視界の範囲内で2人なら問題ないので泳がせる。雰囲気的に強そうな選手だったので、むしろ脚をここで使ってくれてありがたい。
と思っていたが、ここに下りの途中で何人かブリッジがかかったので話は変わってくる。1人が先頭に合流し、3人以上になる。
差が開くと狭い区間も多いため危険だ。脚をあまり使わない範囲でローテに入りながら吸収しに行く。徐々に距離を詰めて下りきる前に無事吸収する。特に指揮する人がいたわけではないが、集団はよく統率されていたと思う。
やがて補給地点に近づく。果たしてこの距離で補給を取る人がいるのか謎だけど、交差して落車が発生する可能性があったので念のため先頭付近で抜けていく。心配したが特に落車はなく過ぎて一安心であった。
20番手前後でスタート地点を通過し、最終周回に入る。集団の人数は最初の半分弱か。登りを良い位置で入れるように対面区間で上がって位置を調整する。
コリーナの坂も最後に向けて踏みすぎないように一定負荷を意識する。先程の下りで逃げても集団全体に追いつかれる意識が働いたのか、登り区間で強烈にペースを上げる人はいなかった。
普通にペースは上がるものの問題ない範囲でクリアし、アップダウン区間をこなす。さて、右折して問題の最後の下り区間である。
今日のポイントである5kmほどの下りの位置取り争い、これに絶対に負けてはならない。常に10番手以内を維持するように意識する。
が、集団の人数が多く道幅も広いので外からどんどん被せられて前方の良い位置を維持できない。
一瞬弱気になり、「位置取りが激しくて、怖くて引いちゃったよ。」とか言うレース後の自分が脳裏に浮かんだ。違う!そうじゃないだろ!弱気な自分を押し込める。
少しでも隙間を見つけて前に上がる。ホイールを差し込んで割り込まれるスペースを潰す。60kmを超える高速域なので言うまでもなく怖い。密集度はじりじりと上がり、ふらつく者に対する怒号が飛ぶ。
前の走者が何かを避けようとリアホイールが左右に振る。前輪だけ咄嗟にずらしてギリギリで交わす。飛んできた小石か何かがサングラスに当たる。冷静になって考えてしまうと恐怖そのものである。
再び「こんな極限状態で位置取り争いなんてできない。もし前で落車でもあったら…」と言う自分が浮かびかける。
これか、と思った。これが勝つ者と自分との差だ。
そうじゃない!おまえは何しに来たんだ!
格好つけてできなかった言い訳を探しているんじゃねえ。
「脚はあったけど最後は塞がってもがけなくて」とか、余裕あったアピールして格好つけてんじゃねえ。
そういうのはもうウンザリだ。
最後まで最大限に集中し続けろ!今日は絶対に勝つんだ!
ここに至ってようやく思考はシンプルになる。
しかし非情にも下り区間はもうすぐ終わりに近づいていた。自分はその時左端にいた。最終コーナーはなるべく減速しないで済む大外側を廻りたいからだ。
前には20人くらい人がいて2,3列になって横幅一杯に広がっている。控えめに言ってもかなり厳しい状況だ。しかし、まだ何かあるはず。何とかして前に。
アスファルトというのは思いのほか外の方まで広がっているもので、左端にいた自分は気付くと草の葉を踏むか踏まないかの境界線を走っていた。
こんなのは通常の自分ではまずやらない判断で、道の端の方まで精度よく施工してくれた施工業者に感謝するしかない。脚にざらざらと草が当たったが、そんなことはどうでも良かった。
これである程度まで前に出られた。しかし端の方に1人だけはみ出している草派の同志がいて、前に出る道筋は最後の最後で悲しくも塞がっていた。
咄嗟に「GO!GO!GO!」と大声で発破をかける。頼む、なんとかどいてくれないか。チラリとこちらを見る。…しかし動かない。もちろん前の人にどく義理はない。自分が戦う相手をわざわざ有利にするような動きを取る必要はないからだ。
みるみる間に勝負どころと踏んでいた最終コーナーに至る前の小さな登りが近づいていた。もはやこれまでか…。
と、その瞬間、ふいに道が広がった。
いや、これは精神的、あるいは比喩的な意味ではなく、物理的な意味でそこの道幅がたまたま広がっていた。
その端を通って、思考するよりも先にペダルを廻す。ここしかないという絶妙なタイミングで登りの前に先頭に出られた。
勢いを利用しそのまま先頭でダンシングを開始する。残り500mくらいのところだったと思う。今考えると早駆けもいいところだ。ふと気づくと先頭で最終コーナーまで来ていた。
絶対に転ばない速度で大きく丁寧に回る。後ろとは詰まったけどここで数秒間脚が休められたのが結果的に良かった。
あとは残り250m、限界までもがき倒すだけだ。先頭でゴールさえできれば後はどうなってもいい。無心にペダルを廻す。
残り150mくらいで一人に抜かれる。これはオワタのか。しかし幸いにも集団ではなく単独だった。後ろを気にするよりも前を抜く気持ちでもがき続ける。
この選手はとても強くて追いつけなかったが、なるべく少しでも真後ろのスリップに入るようにした。ゴールまでの時間がいつもより長く感じた。沿道に人がたくさんいるのが見えた。
残り50m。横や近くに並ぶ人はいないのを視界の片隅に確認する。
残り30mで前の選手がガッツポーズしている。
同時に周りを見て2位は確信して踏みやめる。(←これは振り返ると唯一良くなかった所)
勝ってはいないのでガッツポーズはできないけど、悔しいのと嬉しい気持ちが合わさって最後はなんだか変な動きをしていた。初の入賞、2位だった。
2.所感
JBCFのレースにおいて初めて入賞することができて、本当に嬉しい。次の日になってもまだ嬉しいくらいだ。
ゴール後にあまりにみんなにおめでとうって言われるもんだからサングラスの下で泣きそうになってたのはここだけの話w
なかなか思うような結果が出ない中で、粘り強く応援あるいはサポートしてくれた方々とチームメートに感謝したい。またこのような素晴らしいコースでレースをさせてくれた主催者や住民の方々にも感謝したい。
勝てなかったのは悔しい部分でもあるが、正直うれしい気持ちが9割以上で、結果としてはわりとどうでもいいと思っている。
次からはアマチュア最高峰のE1クラスタでのレースとなる。
キャプテンの大津さんをだいぶ待たせてしまったが、失うものはないので、挑戦者の気持ちで臆することなく挑んで行きたい。
3.気持ちの重要性
個人的にあまりこういう精神論は好きではないのだが、なかなか結果が出なかった原因はここぞというキツい場面で甘えようとする「自分自身の気持ちの弱さ」だったと思う。
自分の場合、様々な動機が重なってようやく精神的なリミッターが解除された。その結果、とり得る中で最善の選択肢を繋いで運良くゴールへの道筋を見出すことができた。
正直に言って、今日のレースで前の20人にフィジカルとしての差はほとんどないと思う。むしろその部分で自分より強い選手はたくさんいた。気持ちを強く持てたことが最終的にほんの少しの差になっただけに思える。
本当に強い選手とは、理由などなくても簡単に精神のリミッターを解除することができるような気持ちの強い選手なのではないかと思う。
パワーメーターが普及して、自転車を漕ぐ力が数値として「ワット」に置き換えられるようになった。数値ばかりクローズアップされるが、代わりに気持ちの強さという数値化できない要素はより見えにくくなっている気がする。
E1の上位に来ている選手たちは、フィジカルが優れているのはもちろんだが、それ以上に気持ち、勝ちに対する執念がとてつもなく強い選手達なのではないか。
これを気持ちウェイトレシオとでも名付けたい。それが最後の驚異的な粘りだったり限界に近い状態で、時には自分の力を超えるような領域でのバイク操作を可能にするのではないかと思う。
そう思うとなんだか妙に納得するところがある。
基本的に精神論よりは科学的なことを信じる方の自分だが、そういうこともあるんだな、と今日の結果を踏まえて感じた。
このことは今後忘れないようにしたい。
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